「なかなか語彙が増えない」「話の内容がよく分からない」そんな悩みをよく耳にします。
言葉については一人ひとりの成長速度が違ってあたり前。でも、スピードはまちまちでも、幼児のときに親子で「言葉遊び」をたくさんしておくことは、その後の成長にとても大切だと思っています。
これは、小学校でいろいろな子どもたちと関わってきた中で感じたことです。幼児期の言葉遊びが、その後の国語力につながったり、コミュニケーション力にも影響を与えたりします。
そこで、今日は簡単に親子でできる「言葉遊び」を紹介したいと思います。我が家でも車の中、お風呂の中、寝る前など、ちょっとした時間で遊んでいるものばかりです。幼児から小学生まで楽しめるので、できるものがあれば試してみてくださいね。
語彙を増やしたいなら、言葉遊びの王道「しりとり」
誰もが知っている有名な言葉遊び「しりとり」。
単語の一番最後の文字(つまり『尻』=語末)から始まる言葉を次々と順番に言っていくゲームです。日本語には「ん」で始まる単語がほぼないなので、「ん」で終わる単語を言った人が負けになります。
しりとり→りんご→ごりら→らっこ→こあら…
みたいな感じですね。場所を問わずどこでもできる、何人でもできるところがいいですね。
ところで、しりとりの起源って知っていました?
なんと平安時代までさかのぼります。源氏物語の題名をしりとり形式で覚えるために、貴族の間で作られたものなのだそうです。当時は「文字鎖」と呼ばれていました。そんなに歴史が長いとはびっくりですね。江戸時代のころには「しりとり」という言葉が使われるようになりました。「尻=語末」をとることから、「しりとり」と呼ばれるようになったといわれています。
長い歴史を経て、今でも子どもたちの間で楽しまれている「しりとり」ですが、何よりもルールが単純で分かりやすい。幼児でも大人でも遊べる楽しさが魅力です。
さて、ここで語彙力を増やしていくポイントをお伝えします。はじめのうちは、子どもが分かる単語をつなげていく方がいいと思います。子どもも分かって楽しいし、「できる」という自己肯定感を高めることができるからです。
だんだん慣れてきたら、子どもが知らない単語(でも子どもに身近な単語)を大人がポンっと言ってみます。子どもは「何それ?」という顔をすると思うので、意味を説明してあげましょう。子どもの頭の中に新しい単語としてインプットされ、次に自分でも使うようになれば、語彙が増えたことが分かります。
言葉遊びで想像力が豊かになる「連想ゲーム」その①
昔「マジカルバナナ」や「山手線ゲーム」と呼ばれていました。「あ、わかる!」と思った方は同世代ですね。単語から連想するものを次々と言っていくゲームです。
バナナといったら黄色→黄色といったら信号→信号といったら道路→道路といったら車…
という感じです。一定のリズムにのって言葉を言っていくので、そのリズムに間に合わなかったり、言葉が出てこなかったりしたら負けになります。
幼児の場合、リズムに合わせるのがむずかしいこともあると思います。そんなときは「さよならさんかくバージョン」がおすすめ。
さよなら さんかく、またきて しかく、しかくは とうふ、とうふは しろい…
シンプルに単語だけをつなげていきます。遊び方を説明するのが大変なら、絵本を読み聞かせしてもいいですね。その延長で遊びが広がっていきますよ。
言葉遊びで想像力が豊かになる「連想ゲーム」その②
さきほどの「連想ゲーム」は単語から連想するものをどんどんつないでいくものでした。それとは違い、お題を決めて、お題から連想するものを言っていくゲームもあります。お題は遊ぶ人みんなで決めてもいいし、はじめだけみんなで決めて、次からは負けた人が決めるというのもあり。
お題が「くだもの」だとすると すいか→いちご→ぶどう→みかん…
すでに誰かが言ったものだったり、言葉が出てこなかったりしたら負けになります。親子や家族で遊ぶ場合は、子どもが連想しやすいものをお題として選んであげるといいですね。色、おやつ、乗り物、果物、動物など、数がたくさん出てくるものの方が答えやすいと思います。
うちの娘は、「はじめてずかん」という本を読み始めてから、語彙が増えた気がします。なかなか生活の中では遭遇しないものもあるので、絵本や図鑑を上手に活用すると語彙は増えますよ。
言葉遊びで頭がやわらかくなる「反対言葉あそび」
年長になってから、よく遊ぶ「反対言葉」。「反対言葉」と聞くと、「前と後ろ」のような反対言葉をイメージされると思いますが、ちょっと違います。わたしが子どものときは「下から読むと?」と問題を出し合っていました。「反対から読むとどうなるか」という遊びです。
「しんぶんし」のはんたいは?「しんぶんし」
「アンパンマン」のはんたいは?「ンマンパンア」
けっこう難易度が高いので、大人の脳トレにもなります。頭の中で考えても、合っているかどうか分からないので、最後は書いて確認するのが◎!
昔、「てぶくろの反対は?」「ろくぶて(6回ぶて)」と答えると6回ぶたれるという遊びをしていたことを思い出しました。昭和あるある!? これを今の子がやると、ちょっと問題になりそうなので、我が子には教えないようにします。大人になると、この楽しさが分からなくなるのか…ちょっとさみしい気もします。
言葉のリズムと音を楽しむ「オノマトペ」
「オノマトペ」って知っていますか?自然界の音や声、物事の状態や動きを音で表現した言葉。擬音語や擬声語、擬態語といわれているものです。
日本語にはこの「オノマトペ」がけっこう使われます。海外で日本語を勉強している人には、このオノマトペを理解するのはむずかしいでしょうね。人によって使い方も違うし、ニュアンスで意味を理解しているところもあるし。
この「オノマトペ」、子どもは大好きなんですよね。独特の音やリズムがおもしろいのでしょう。
娘も、オノマトペに敏感に反応します。例えば、餃子作りをしていて「具とギューギューつめて」とわたしが説明。すると娘は「ギューギューって何?」と意味を確認したあと、ケタケタ笑いながら「ギューギュー」を連呼したり。(あ、ケタケタもオノマトペですね)日常会話の中にオノマトペを使うだけで、会話が楽しくなることもありますよ。
「オノマトペ」がいまいちピンとこない方は、この本もおすすめです。娘が「オノマトペ」に興味をもつきっかけになった一冊。
言葉遊びで滑舌をよくする「早口言葉」
時代をこえて子どもが大好きな言葉遊び「早口言葉」。間違えないように、いかにはやく言葉を言うかを競う「言葉遊び」です。
「早口言葉」は、言いにくく下を動かしにくいものが多いため、言葉の意味を理解しせずに遊んでいることも多いです。そもそも、文章の意味よりも、響きや韻をふんだ言いづらい音節をあえて組み合わせているので、意味は分かっていなくてもOK!
なまむぎ なまごめ なまたまご
青パジャマ 赤パジャマ 黄パジャマ
など代表的な「早口言葉」ですね。
「早口言葉」は、子どもが喜ぶ言葉遊びだというだけでなく、滑舌をよくしたり、脳を活性化したりするといわれています。また、「早口言葉が言えるだけでちょっとかっこいい」という子どもの世界もあります。個人的には、顔の筋トレにもいいんじゃないかな~と思います。子どもと一緒に早口言葉で脳トレ&顔の筋トレもありですね。
文字が書ける子にぴったりな言葉遊び「でたらめ作文」
ひらがなが書けるようになったら「でたらめ作文」も楽しいです。これは、のちのち作文力にもつながります。
わたしが子どものときは「いつ・どこで・だれが・何をしたゲーム」と呼んでいました。最近の子は「でたらめ作文」といっています。たしかにその方が短縮して言いやすい。
いつ・どこで・だれが・なにをした の4つを分担します。たとえば、「いつ」を書く人は、紙に「いつ」にあたる言葉を書きます。「2020年」でもいいし「自分の誕生日」でもいいし、「時間」や「曜日」でもいい。同じように「どこで」の人は「場所」、「誰が」の人は「主語になる人や生き物の名前」、「何をした」の人は「述語になること(勉強した・ごはんを食べた・プールに入ったなど)」を書きます。
たくさん言葉が集まった方が楽しい「でたらめ作文」になるので、遊ぶ人数が少ない場合はひとり複数枚書くようにします。
袋か箱に「いつ」「どこで」「だれが」「なにをした」別々に紙を入れてもらい、一枚ずつ引いて「でたらめ作文」を作ります。あたり前ですが、別々の人が好き好きに書いた単語をつなげて作る作文なので、「でたらめ」になります。でも、それが楽しいんですね。小学生も大好きですよ。
幼児と遊ぶなら、「だれが」「なにをした」だけの主語と述語2つではじめてもいいですね。文の構成を学ぶことができて、一石二鳥。年長くらいになると「でたらめ」の楽しさが分かると思います。
身についた語彙力がよくわかる言葉遊び「言葉あつめゲーム」
ある程度「言葉遊び」をしてきたら、今度は「言葉あつめゲーム」をしてみましょう。遊び方は「しりとり」と似ています。順番に単語を言っていきます。ただ、言葉のはじめに「あ」がつくもの のように、限定して言葉を集めます。
「あ」がつくもの アイスクリーム→あめ→あり→あかしんごう…
最後に「ん」がついても大丈夫です。たくさん言葉を集められた方が勝ちになります。でも、勝ち負けなしで遊んでも楽しいです。
うちでは、夜寝る前にこれで遊ぶことが多いです。寝る前に頭を使うと頭が冴えちゃうのはわたしだけ!?のようで、娘は、気づくと眠りについていることが多いです。もしかしたら、「ひつじが一匹」と同じ効果があるのかもしれません。
言葉遊びで空想の世界を楽しむ「おてて絵本」
「おてて絵本」って知っていますか?
両手を本に見立てて、想像力を働かせて物語を作り上げていく親子遊びです。手をひろげて、その手を見ながら、お話をつくっていくもの。これは一人でも遊べるのですが、親子で遊ぶとうんと楽しくなります。
まずは、子どもからスタート。好きなところまでお話を語ってもらいます。途中でバトンタッチしたくなったら「はい、ママどうぞ」とバトンタッチ。次にお母さんがお話の続きを考えます。好きなところで「はい、〇〇ちゃんどうぞ」とバトンタッチしてあげてください。これを繰り返して、お話を完成させます。
子どもが一人でお話を作っても楽しいのですが、途中で大人が入って物語に変化を与えてあげると、さらに子どもの想像力がふくらみます。子どものお話の中に会話がはいっていなかったら、大人が会話文を取り入れるだけで、子どもはまねをします(学びます)。
この「おてて絵本」は、文章を書く力、組み立てる力をつけることにつながります。さらに、空想の世界を思い描くことで、芸術面での力も伸びていくはず。幼児のときだからこそ、たくさん遊ばせたい遊びのひとつです。
【まとめ】遊びを通して、たくさんの言葉と触れ合おう!
いかがでしたか。はじめは「言葉遊びって何?」って思っていた方も、意外と自分が遊んだ遊びだったのではないでしょうか。
わたしが子どものころと比べると、今の子どもたちは遊ぶ時間が少なくなる一方で、遊ぶ道具は増え、ものを使わない遊びをする機会が減っているように感じます。
ゲームやおもちゃがなくても、遊べるんだよ~
ってことを、大人がちょっと教えてあげるだけで、子もは創意工夫していきます。
今日紹介した「言葉遊び」の他にも、簡単ですぐに遊べる遊びはたくさんあります。子どもの語彙力は、幼児のときにどれだけ「言葉」と触れ合ったかが大きく影響します。
「言葉」とは、絵本でもいいし、言葉遊びでもいい、そして日々の会話でも。日々の親子の会話から、子どもはコミュニケーションを学んでいきます。できるものを、できる範囲で、無理せずに! で試してみてくださいね。
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