「宿題をやらなくて困っている」という悩み、教員時代もよく相談を受けました。「宿題やりなさ~い」といくら言っても、まったく効果がないという方、意外と多いのではないでしょうか。
「宿題ができない」というお子さんは、「なぜ宿題ができないのか」という原因を見つけてあげることが大切です。
今日は、宿題ができないことに隠された「困っているサイン」をお伝えしたいと思います。もし、お子さんが宿題をやらなくて困っているという方がいたら、どれかに当てはまらないか考える手立てにしてくださいね。
困ったサイン① 宿題を把握していない
毎日の宿題が何なのか、分かっていない場合があります。連絡帳に次の日の時間割や持ち物、宿題が書かれていない子は、宿題はあるけれど何をやるのか分からないという子も。
「友だちに聞けば分かる」のですが、だいたい「やりたくない」気持ちが勝ってしまい、「今日は宿題な~い」と言ったりします。または、宿題になっているものを学校に忘れて帰ってきてしまってできないという子もいます。
まずは、連絡帳をしっかり書く習慣をつけることが大切です。連絡帳を書けない理由を一緒に考えてみることも必要かもしれません。
時間がなくて書けないのか、黒板に書いてある文字を書きうつすことがむずかしい子も中にはいます。そういった場合には、連絡帳を工夫してあげるのも効果があります。教科を事前に書いてあるものに〇をつけるだけにしたり、書いたものを先生にチェックしてもらったりという方法もあります。
連絡帳がしっかり書けるようになれば、宿題が分からないことは解決できます。「なぜ連絡帳が書けないのか」を考えることで、困っていることに気づくことができるかもしれません。
困ったサイン② 勉強に集中できない
今までは宿題をきちんとやっていたのに、突然できなくなる場合があります。勉強に集中できないことが原因だと考えられます。環境の変化や心理的な変化が関わっているかもしれません。
たとえば、弟や妹が気になって集中して宿題ができない。小さい弟や妹に、宿題に落書きをされてしまった、汚されてしまったという子が実際にいました。静かに、集中して宿題ができる環境を整えてあげることも大切です。
または、友だち関係や学校のこと、家族のことなど何か悩んでいるのかもしれません。悩みがあると、どうしても学習に集中できなくなってしまいます。「宿題をやりなさい」というのではなく、「何かあった?」と心の声をきいてあげることも大切です。
困ったサイン③ 分からない・ついていけていない
学習面で困っている、分からないことがあると、宿題はひとりでやるのはむずかしいです。「ひとりでできない=宿題をやらない」という可能性が考えられます。
「こんなことも分からないの?」ではなく、「分からないところは一緒にやろう」と声をかけてあげましょう。お仕事をされている方は、なかなか時間がとれないですよね。朝いつもより少しはやく起きてやる、週末に時間を決めてやるなど、無理のない範囲で時間をつくることをおすすめします。
もちろん「学校の先生に聞く」こともできますが、個別対応はどうしても休み時間になってしまい、休み時間遊びたい子にとっては逆効果になることも。
「親が勉強を教えるとけんかになってしまう」という声もよく聞きます。兄や姉だと素直に教えてもらえる子もいるようです。祖父母でもいいし、親以外で分からないことを教えてもらえる人が見つかるといいですね。
困ったサイン④ 宿題をする時間がない
最近の子どもたちは、習い事で予定がぎっしり!という子もいます。放課後すぐに習い事に行き、帰ってくるのは夜。ごはんを食べてお風呂に入ったら寝る時間…宿題をやる時間がないという子もいるのではないでしょうか。
朝早起きして宿題をやってくる子もいますが、「宿題をする時間がなかった」という子も実際にいます。忙しすぎるのが原因です。
子どものスケジュール管理をしてあげること(もちろん子どもと一緒に考えることも大事)が大切ではないかと思います。
一方、遊びを優先させてしまい、宿題をする時間がないという子もいます。これは、親子でよく話し合い、宿題をする時間を決めることが大事です。
「遊んだあとにやる」と約束したのに、結局眠くなってできなかった…ということもあるでしょう。約束したのにできなかったのであれば、その約束を見直すチャンスです。「いつなら、できるのか」子どもが自分で決められるように促すのがポイントです。
困ったサイン⑤ 宿題をする意味がわからない
個人的には宿題は毎日やらなくてもいいのではないかと思っています。ただ、家庭での学習習慣をつけるためには、定期的に継続的に机に向かう時間をつくることが大切。自学自習ができることをめざす手段のひとつが「宿題」だと思っています。
「学校の勉強は簡単すぎる」と感じている子もいるはずです。そんな子にとっては、宿題はつまらないもの、やる意味が分からないものになってしまっているのかもしれません。
でも、それって、とてももったいないことです。
本来、「学ぶ」ことは楽しいこと。それなら、自分の興味のあるもの、もっと知りたいことを「宿題」として取り組んでみてはどうでしょうか。
学校の宿題はおまけ。ささっと済ませてしまいましょう。それ以外に夢中になれるものを調べたり、やってみたりする時間にすることで、モチベーションがあがるかもしれませんよ。
「なんで宿題をしなくちゃいけないの?」と聞かれたら、どう答えますか。それをそのまま子どもに聞いてみてもいいですね。親子で「宿題の意味」を考えることで、子どもが自分で「宿題しよう」という気持ちが生まれることも。
【まとめ】宿題は一律でなくてもいい。学校に相談することも大事!
「宿題」といっても、地域や学校、担任の先生によって量や出し方にも違いがあるものだと思います。
教員のころ、「宿題は毎日出してください」と保護者からお願いされたことがありました。でも、一方で一人ひとりの子どもたちの状況が違う中で、一律の宿題には疑問をもっていました。
「宿題」が家庭での学習習慣をつけることを目的としているのなら、みんな同じ宿題ではなくてもいいと思うんですよね。
実際、担任をしていたとき、「自学」といって「自分で宿題を決めてやってくる」ということを宿題にしていたこともありました。
かけ算九九が苦手な子は九九を練習する、漢字が苦手な子は漢字を、好きなサッカーチームについて調べてくる子もいれば、社会で学んだものをさらに詳しく調べてくる子もいました。
一律の宿題と違って、子どもも生き生きとしていたし、見ているこちらもワクワクしたことを覚えています。ただ、この宿題を出していたときも、宿題ができない子はいました。「何をやっていいのか分からない」「宿題をするという習慣がない」ことを原因だと思います。
どんな宿題を出しても、家庭での学習習慣は家庭の協力なしではむずかしい…
と実感しました。
「宿題はなんのため?」それは「子どものため」です。親はそう思っていても、子どもはそう感じていない。「自分のためになっている実感がない」のだと思います。
授業についていくのが大変な子が、宿題をすることで「分かった。できた」を実感できたり、漢字が苦手な子が、宿題で練習したことで苦手意識を克服できたり、授業が簡単すぎると感じている子が、宿題で自分の興味のあることを追求できたり、そういう「実感」があれば宿題の意味を見出せるのではないでしょうか。
「宿題ができない」という子は困っていることがあるはずです。何に困っているのかを周りの大人が一緒に考えてあげることで、その子に合った方法を見つけることができるはず。
宿題は一律でなくてもいい。たぶん、学校の先生の中には同じように考えている先生はいると思います。
まずは、お子さんの困っているサインに気づくこと、一緒に悩むこと、そして学校に相談してみること。
「仕方ない」と見過ごすことは簡単です。でも、見過ごすことで、もっと困ることになるのは「子ども」です。
できることは必ずありますよ。「宿題」に取り組む姿から、子どもの「心の声」が聴こえることがあります。見逃さないで、立ち止まるだけでも、子どもの心は救われます。
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