少し前に、こんな口コミを目にしました。
「予習をすると、学校の先生が嫌がる」
う~ん、そういう風に感じている方も少なからずいるんだぁ
と少し驚きました。実際はどうなのか…。
わたしは、元教員であって、すべての学校の先生たちのことを把握するような立派な立場でもなければ、ありとあらゆる先生たちとの交流をしているわけでもありません。つまり、個人的見解になってしまいますが、わたし自身の経験とわたしの知る先生たちの実態をもとに、「予習・復習の使い分け」について書いてみたいと思います。
「予習と復習どっちが大事?」「予習はしないと授業についていけないの?」などという疑問をお持ちの方の参考にはなるのではないかと思います。
「予習をすると先生は嫌がる」は、ちょっと違う!
「予習をすると先生が嫌がる」
はっきりいって、これは誤解です。
ただ、授業中「予習」をしている子に見られる、特徴があります。
それが…
①自分は分かっていることだから、まわりの友だちに自慢したくなる。
②自分にとっては簡単に思えることだから、できない子を「そんなのもできないの?」という目で見てしまう。
③自分は分かっていることだから、先生の話を最後まで聞こうとしない。
④自分は分かっていることだから、授業に新鮮味を感じられない。
こうやって書くと「予習をしている子が悪い」と感じられるかもしれませんが、そうではありません。予習をしている子がこういった行動になるのは、当然のこと。だって、自分はすでに学習済みなのだから!
こういった行動は、担任の先生や周りの大人の姿勢で変えていくことはできます。
実際、わたしも担任をしていたとき、どのクラスにもそういった感じの子はいました。でも、根気よく声かけを続け、ちょっと工夫をするだけで、分かっている子は周りの友だちを助けるようになり、分からないことを恥ずかしいという雰囲気をなくすこともできます。
では、どんな工夫や声かけが必要なのか。
それは、教室は間違っていいところだという土台を作ること。
そのために、次のようなことを伝えるようにしていました。
・失敗する子、分からない子を笑ったり、からかったりすることは絶対によくないこと。
・逆に、自分ができること、分かっていることを周りに説明したり、手助けしたりすることで、自分の力が高まること。
・学校の授業は、分かっている子に合わせるのではなく、はじめて学習する子に合わせて進めていくこと。
そうすると、子どもたちは、自然と子ども同士で学び合うようになり、できる/できないで優劣をつけることがなくなっていきます。分からない子は「分からない」と伝えることができるため、分からないままにすることなく、学習を積み重ねていくことができるようになります。
これは、あくまで教員側の姿勢や声かけが大きく影響することではありますが、家庭でも同じようにお子さんに伝えていくことで相乗効果が得られます。
「自分さえできればいい」「予習しているから学校の授業は聞かなくてもいい」「こんな簡単な問題もできない子がいるんだよ」
など、お子さんが家で話している言葉をよく聴き、そのときに親がどう声をかけるかが重要になってきます。
「予習をすると先生が嫌がる」ように見えるのは、おそらく、すでに分かっていることだから、授業に集中できない様子が見られたり、できない子を見下すような態度が見られたり、ということが原因かもしれません。
しかし、それは「予習」がダメなことだからではなく、「予習」をしたことで起きた結果。つまり、「先生が嫌がるから、予習はしない・できない」という考え方には誤解があるということです。
「予習と復習どっちが大事?」復習はとっても大切です!
「予習」と「復習」どちらが大切なのか。
おそらく、多くの先生たちは「復習」と答えるでしょう。わたしも、同じです。
それには理由があります。学校の授業時間には限りがあります。
たとえば、小学校2年生で学ぶ「かけ算九九」。学校の授業では、九九の導入や意味などの学習をした上で、九九を覚える授業に入ります。九九を覚える授業は、ひとつの段に一時間で進んでいくことが多いです。小学校の授業の1コマ45分間で、ひとつの段を完全に覚えることができるでしょうか。
1の段なら覚えることができるかもしれません。でも、それが7の段や8の段になっていくと、かなりむずかしいことが想像できると思います。
つまり、学校の授業だけですべてを完全に習得することはむずかしいということ。九九に限らず、漢字の書き取りや計算なども、一度授業で習ったからといって、すぐに身につくものではありません。繰り返し練習するうちに、自然と書けるようになったり、できるようになったりしていくものが多くあります。
残念ながら、そういった反復練習を、すべて学校で行うことはできません。(今の学習内容・時間では不可能なんです…)
そこで、大切になるのが、家庭学習。宿題という形で出している学校もあると思います。学校で学習したことを、家でも復習すること。そうすることで、学校では分かったつもりだったけど、実は分かっていないことに気づいたり、学校では分からなかったけど、家でもう一度ゆっくり考えたら分かるようになったり、と家庭学習には大きな意味があります。
「予習と復習どっちが大事か」といったら、「復習」と答えるには理由がちゃんとあるんです。
「予習をしないと授業についていけない?」ことはありません!
「授業がどんどん進んでいく」「復習しないとついていけない」
そんな声もあるようです。たしかに、授業の進み方は高学年になるにつれて、はやくなっていくと思います。それは、学ばなければならないことが増えていくからです。
ただ、大事なことは、それまでに積み重ねがされているかどうか。日々の学習内容が理解できていて、学びが積み重なっている場合は、高学年になって授業についていくことができない…ということは少ないように感じます。
高学年になって授業についていくことがむずかしい子の多くは、それまでの学習過程で分からないままになっているものがあったり、積み重なっていない分野があったりします。
その場合には、予習をして授業に臨むよりも、まずは、分からないところに立ち返って復習をすることが大切!それをせずに、対処療法的に予習を優先しても、積み重ねにはつながりません。
特に、算数などはそれぞれの学年をまたいで、積み重ねていくもの。たとえば、かけ算九九が覚えられていなければ、わり算で苦戦することに…。学年が変わればリセットされるものではありません。
苦手分野を作らないように、コツコツと復習をしていくことが、とても大切だと思います。すでに、苦手分野ができてしまったという子も、長い休みなどを利用して苦手なところだけを重点的に復習する時間をつくってみてはどうでしょうか。
基本は「復習」。でも「予習」が必要なお子さんもいる!
「復習」の大切さをお伝えしてきました。でも、中には「予習」をした方がいいお子さんもいます。
たとえば、新しいことに不安を強く感じる子。新しいことを学ぶことは、ワクワクするものです。でも、中には新しいことを学ぶことに「不安」を感じるお子さんもいます。そんな子には「予習」が必要なことも…。予習することで、自信をもって授業に臨むことができるようになることもあるからです。
また、学習理解に時間がかかるお子さんも、予習をした方がいい場合があります。復習だけでは、復習するものがどんどん増えていき、子どもの負担になることがあるからです。その場合には、少しさきどりして学習しておき、学校の授業で理解を定着させ、復習で身につけることをめざします。
そうすることで、復習への負担を減らすことができます。分からないことを繰り返し学習することは、子どもにとっては楽しいことではありません。本来、学習は楽しいもの。予習を取り入れることで、楽しさを維持することができます。
【まとめ】予習をすると先生は嫌がるは誤解!予習と復習をうまく使い分けよう。
「予習をすると先生が嫌がる」は大きな誤解です。もしかしたら、中には、どう対応していいのか分からず、嫌がっている先生もいるのかもしれませんが…。少なくとも、わたしの知る元同僚たちは、そのようなことはありませんでした。
大事なことは、子どものため。
予習をすることがメリットになるお子さんもいます。予習しなくても、復習をしっかりすることで学習内容が定着していく子もいます。大切なことは、どんな方法が合っているか。子ども一人一人方法は違ってあたり前。それを見極めることが大切です。
もし、お子さんのことで不安なことや悩んでいることがあれば、面談などを利用して、ぜひ学校の先生と相談してみてくださいね。
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