「小学校入学前に、一生懸命たし算とひき算を勉強させている」
という声を聞きます。
たしかに暗記してしまえば計算ははやくなるし、小学校に入ったあとで、授業に困ることは少なくなるかもしれません。
でも、幼児の「今」だからこそ、計算よりも前に「数遊び」をたくさん取り入れる方が大切ではないかと思っています。
とはいっても、
「なぜ、数遊びが大切なの?」
「数遊びってどんなもの?」
と疑問をもたれる方もいるのではないでしょうか。
そこで、今日は「数遊びが大切なわけ」と「具体的な数遊びの例」を紹介したいと思います。
「算数好きな子になったらいいなぁ」と思っている方、「数遊びって聞いたことがあるけどやり方が分からない」という方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。(ただし、「天才を育てたい!」という方には参考にならないかもしれません…)
たし算よりも「数遊び」が大事なわけ
ちょっとむずかしい話になりますが、教育には発達段階に応じて目標がかかげられています。
幼児には幼稚園教育要領、小学生には小学校学習指導要領というものです。それらをもとに、幼稚園や小学校では「教育方針」や「学習内容」「学習方法」などを考えています。
たとえば、文部科学省が出している「幼稚園指導要領のポイント」には、下記のように書かれています。
幼児期に育みたい資質・能力は,小学校以降のようないわゆる教科指導で育むのではなく,幼児の自発的な活動である遊びや生活の中で,感性を働かせてよさや美しさを感じ取ったり,不思議さに気付いたり,できるようになったことなどを使いながら,試したり,いろいろな方法を工夫したりすることなどを通じて育むことが重要。
「新幼稚園指導要領のポイント」 文部科学省より
つまり、幼児期には遊びや生活体験が大切だということです。
これを見ると分かるように、「たし算やひき算」は小学校に入ってからの教科「算数」で学習するものです。(もちろん、幼児期に学習してはいけないといっているわけではありません)
幼児期には「幼児期だからこそ大切にしたいものがありますよ~」ということです。これ以外に、具体的に「数」と関係してくる記載もあります。
幼児が,遊びの中で周囲の環境と関わり,次第に周囲の世界に好奇心を抱き,その意味や操作の仕方に関心をもち,物事の法則性に気付き,自分なりに考えることができるようになる過程を大切にすること。
また,他の幼児の考えなどに触れて新しい考えを生み出す喜びや楽しさを味わい,自分の考えをよりよいものにしようとする気持ちが育つようにすること。
「新幼稚園指導要領のポイント」 文部科学省より
数字に興味をもったり、数をかぞえたり、物をわけたり…そういった生活経験や遊びの中から「あれ?」「これってこういうこと⁉」というような発見や驚きが大切だということです。
それが「数の概念」につながっていくんですね。
「子どもがいつの間にか100まで数えられるようになっていて驚いた」という声を聞きます。我が子もそうでした。でも、実際に100という数がどんなものなのかは、分かっている子は少ないのではないでしょうか。
「数の概念」を身につけるには、幼児期に具体物(実際に手で触れられるもの・実際に使われているもの)がポイントです!
具体物にたくさん触れながら、数をかぞえたり、どちらが多いのかを比べたりすることが、とても大切になってきます。それを「遊びや生活の中で、たくさんさせましょう」というのが、幼稚園指導要領に書かれているんですね。
では、具体的にどんなことができるのでしょうか。
そこで、今日はおうちで簡単にできる「数遊び」を紹介したいと思います。(1~10まで数えらえるようになっていることが前提の遊びです)
*もし10まで唱えるのがまだ…という場合は、まずは10までの数を唱えたり、数えたりする経験をたくさんさせてあげてください。
おうちでできる数遊び① 「どっちが多い?」
手の中に入るものを5個用意します。うちは、小さなアメを使いました。
5個のアメを両手に隠します。そして「右と左どちらが多いか」子どもに予想させます。
どちらか片方だけを開き、アメを数えます。
たとえば、右に「3こ」の場合、左にいくつ入っているのか、子どもは分からりません。(すでに5の分解を理解している子は分かります)
そこで「左にはいくつ入っているかな?」と予想させます。
そして、左手のアメの数を確認します。
「どちらが多く入っていたでしょうか」と聞きます。この場合、右が3、左が2になるので、「右が多い」ことを確認しましょう。数えながら、確認するのもいいですね。
子どもは、予想があたると大喜び!「もう一度やりたい!」というはずです。
何度かやっていると、片方の数が分かれば、もう片方の数も分かるようになってきます。これが「5の分解」につながっていくんですね。
5つに慣れてきたら、もうちょっと小さい具体物を使って10個バージョンでやってみましょう。「10の分解」は、ひき算につながります。
おうちでできる数遊び② トランプならべ
トランプは「数字」に興味をもった子におすすめです。
1から10までのトランプを使って「5ならべ」をします。
「7ならべ」と同じように5から順番に数を並べていきます。
トランプのいいところは、数字だけでなく、マークもあるところ。2つを見ながら並べていくので、頭を使います。この「5ならべ」では、数の順番を身につけることができます。
マークはまだむずかしいという場合は、まずはハートの1~10だけを使うなど、工夫してみてくださいね。
おうちでできる数遊び③ アメ取りゲーム
アメを10個使います。(アメの代わりになるものでも大丈夫です)
じゃんけんでアメをとる順番を決めます。
一人一回3つまでアメをとることができます。つまり、自分の番になったら「1つでも、2つでも、3つでも、3つまでなら好きな数アメをとることができる」ということです。
順番にアメをとっていって、最後の1つをとった人が負け!
いかに自分が最後の1つをとらないですむのか、作戦を立てながらアメをとらなくてはなりません。
慣れてきたら、アメの数を増やすと盛り上がります。5歳の娘も大好きなゲームです。
おうちでできる数遊び④ あわせて10
1から9のトランプを使います。神経衰弱をやったことがない場合は、まずは普通の神経衰弱でルールを確認しましょう。
神経衰弱と同じように遊びますが、同じ数字を当てるのではなく、「たしたら10になるペア」を探します。たとえば、はじめに「3」を選び、次に「7」が出たら、ぺア成立です。自分のカード尾になります。
「あわせて10」になれば、自分のカードとしてもらえるというわけです。
この「あわせて10」では、「10の合成」が学べます。この10の合成も、算数の土台となるので、たっぷり遊びの中で身につけられると、あとあと楽になりますよ!
おうちでできる数遊び⑤ 10のババ抜き
1から9までのトランプとジョーカー1枚。
基本のルールはババ抜きと一緒ですが、「同じ数字のぺア」ではなく、「あわせて10になるペア」で、カードを捨てられます。
「10の合成」が分かった上で遊びましょう。まずは、④の神経衰弱で10のぺアを覚える。そのあと、10のババ抜きに進むとスムーズに遊べると思います。これも「10の合成」が身につく遊びです。
トランプは100均でも購入できますが、買うならプラスチック製がおすすめ。紙だとすぐにやぶれたり、折れたりします。
【まとめ】数遊びが「算数好き」につながる!
今回は、簡単にできる「数遊び」を5つ紹介しました。でも、生活の中にはこれ以外にも「数」に触れる機会がたくさんあります。
工作で使った紙の長さ比べをしてもいいし、ぬいぐるみの背比べをしても楽しいですね。1袋や1パックに野菜や果物がいくつ入っているか、予想して数えることもできます。お菓子を人数分分けることもできます。
料理も数がたくさんでてきます。さらに量感も身につきます。
たとえば、200mlがどのくらいか、小さいころから料理をしている子は想像ができるようになります。大さじ、小さじ、1リットルなどの水のかさも、量感が身についている子の方が、イメージしやすいようです。
長い階段があったら、段数をかぞえながらのぼってもいいですね。散歩で疲れてきたら、「家まで何歩か数えよう!」と数えながら歩いたら、あっという間に家についていた!なんてこともありますよね。
身近なところで、たくさん「数」に触れ、具体物を数える経験をすることで、「数の概念」の基礎ができていきます。それが、その後の算数につながっていくことになります。
今は、「知育玩具」も数多く売り出されているので、そういったものを活用するのもひとつかもしれません。でも、わざわざ買わなくても、家の中、生活の中に、知育の素材はたくさん隠れていますよ~。
「さぁ、たし算ひき算のドリルやらせなくちゃ!」と焦らなくて大丈夫。
経験上、10の合成(何と何で10になるか)と、10の分解(10は何と何でできているか)が分かれば、たし算とひき算はすんなりできるようになります。
そのためにも、幼児の間に「1~10ってこんな数だよ」ってことを遊びながら学ばせてあげたいですね。
子どものペースを大切に、親ががんばりすぎないことを忘れずに~。
また、おもしろい「数遊び」に出会ったら紹介しますね。
我が子が小さいときよく遊んでいたおもちゃは、こんな感じのものです↓ 形遊びにもなるし、おままごととしても使っていましたよ。おすすめです。
目でみて、手でさわって10を体感できるおもちゃもあるようです。
お子さんが「年長さん」だったら、こちらも参考にしてみてください。
コメント